初めてのコロンボ
新人機長の訓練のため教官業務で右席に座って、スリランカのコロンボまで。
先週のベイルートに続き、人生初めて足を踏み入れる国なので何だかテンションが上がります。
スリランカも日本人にはあまり馴染みの無い国で、直行便は成田〜コロンボが週4便
2009年まで内戦が行われていたので、特にセイロン島北部では治安が良くありませんでしたが近年は比較的安定しているようです。
ちなみに昔、社会の授業でスリランカの首都がコロンボと教わった方は私と同年代です、、、、現在の首都はスリジャヤワルダナプラコッテ、言語はシンハラ語でまったく理解ができませんでした。
今回は不規則なスケジュールでコロンボに到着後、現地でまる2日間のお休み
ちょっとした休暇です。
さて、、、何をするかな?
初めてのベイルート
初めてのベイルート、、、、と言っても日本人にはあまり馴染みの無い都市なので、ピンと来ない読者の方が大半だと思いますが。
地中海に面した穏やかな気候の国ですが、、、
内政は複雑でシーア派のヒズボラがイランやシリアから支援を受けて未だに活発に活動中。
まぁ、、、西に地中海、南にイスラエル、残りはすべてシリアに囲まれた地政学的にリスクの大きな場所に位置しているので仕方がないのですが、「中東のパリ」と呼ばれるくらい美しい都市なのに残念ながら観光に不向きな場所になっています。
海外安全ホームページ: 危険・スポット・広域情報(レバノン)
治安が落ち着いたら観光で訪れてみたい都市のひとつです、、、、ベイルート。
飛行機の外板
少し前にJALWAYS時代に一緒に飛んでいたアメリカ人の友人から
「自分たちが飛んだ在来型ジャンボが砂漠で退役して、その外板がタグとして売られてるよっ!」
という連絡があり、早速買っちゃいました。
この飛行機(B747-300 MSN23068)は1983年に日本航空にデリバリーされ、
当初は「N213JL」でアメリカ籍の登録となっていました。
1998年に日本航空が買い取り「JA813J」日本籍での登録に、
2010年の日本航空破綻と同時にアメリカのSouthern Airに売却され「N818SA」に、
翌年の2011年には現役を退いて現在では砂漠で眠っています。
ログブックを調べてみると「JA813J」時代に副操縦士として主にホノルル、成田、名古屋、バンコクといった路線で98時間58分乗務していました。
自分の乗務した飛行機の一部がこうやって手元に残るなんてとても感慨深く、初心に戻って安全運航に精進しようという気持ちになりました。
秋休みで暫く日本に帰って酒浸りの生活を送っていましたが、、、、また明日から職場に復帰します。
あっ、ちなみにタグはこちらで購入しました。
興味のある方は是非!
モンスーン
バンコクからの折り返し便
日没後の出発だったのですが、空港周辺というかバンコク一帯に積乱雲が発達してカミナリがあちこちでピカピカゴロゴロドンドン。
まるで夜のエンターテイメントのように突然明るくなったり、爆裂音が響いたりしていました。
コックピットで無意識に Thunder Buddy Songを口ずさみFMCにデータを打ち込んでいる自分、、、、
人の気配を感じ、振り返ると整備士さんが不思議そうな顔でこちらを見ていました。
(´Д`)
予定より1時間近く遅れて離陸しましたが、空港周辺は予想していたとおり雷雲がひしめき合っていました
結局、右往左往しながら無事に帰ってきました。
モンスーンが終わるまでもう少し、、、積乱雲は続きそうです。
エアフォースワン?
B777の新人機長訓練でバンコクまで右席に座り操縦を担当しました。
駐機場を出発して滑走路に向け地上滑走している時に何だか違和感が、、、、
自分で言うのも何ですが、操作がぎこちない
90度曲がる時、ステアリングがぎこちない
停止する時、ブレーキ操作がぎこちない
あれ?あれ?と少し焦る自分、、、、
どうしてこんなに操作がぎこちないんだろう?
なんだかおかしい、、、
と考えること数分。
(゚д゚)!
B777の右席で操縦するの人生で初めて!
6年くらい前にスタンバイから呼び出されて1度だけB777の右席業務をしたことがありますが、当時はまだ教官じゃなかったので操縦させてもらえず。
もちろん定期的なシミュレーター訓練では右席で操作しますが、主に緊急状態の離着陸訓練をするので、地上滑走の訓練ってしません。
そりゃあ、ぎこちないはずです。
滑走路に到着する頃にはもう慣れて、スムーズに操作できるようになりましたが。。。
その後、離陸して経路上の雲を避けながら飛んでいたのですが
雲を避けるため、管制官に進路の変更を要求したら、即答で「許可!」
途中、かなり大きな雲域があって管制官に無理な経路変更のお願いをしても、即答で「許可!」
で、バンコクに向けて降下開始
もちろんバンコク周辺の進入空域も雲だらけ
進路の変更を要求すると、即答で「許可!」
通常ならバンコクの進入管制区はラッシュアワーで速度制限されたり、管制官の方から進路指示され時間稼ぎの迂回や待機をさせられるのですが、
今回に限っては速度制限も待機もなし
っていうか、ラッシュアワーなのに周りに飛行機が1機もいない。
実際TCAS(衝突防止装置)上には多くの飛行機が映し出されているのですが、なぜか管制官との交信が聞こえてこない、、、、みんな待機させられているみたい。
ちょっと不安になったので
私「速度指示とかありますか?」
管制官「好きな速度で飛んで下さい、ILS進入を許可します」
私「えっ!?まだ滑走路から50マイル(92km)以上ありますよ?」
管制官「問題ありません、進入を許可します、管制塔に周波数変更してください。」
通常なら滑走路から5マイルくらいで管制塔から着陸許可がでるのですが、今回は30マイルくらいで管制塔から着陸許可が、、、、、
ラッシュアワーに周りに飛行機が1機もいない状態
訓練生と何かおかしいね、、、、と話しながらも無事に着陸。
着陸後、誘導路を地上滑走しながら駐機場に向かっていると
管制官「タイ航空XXX便、その位置で停止してください、VIP機が通過します」
VIP機?
おれ?
私「・・・そう言えば」
訓練生「・・・そうでしたね」
そう、、、、、出発前に客室乗務員のチーフから説明を受けていたんです
「某国の国家元首が当便にご搭乗なされます」と。
そりゃあ、、、、優先度が高いよね。
パイロットに求めれる資質
学生の方からよく
「パイロットに求められる資質ってなんですか?」
という質問を受けます。
パイロットを目指すために学生時代からその資質を養いたい
という意志を感じますし、とっても良いことだと思います。
個人的には「コミュニケーション能力」と「英語」がとても重要だと考えていますが、やっぱり時代の流れというものがあって、飛行機の自動化が進み、システムの信頼性が高くなるにつれてこの一般的に「パイロットに求められる資質」も変わってきたりします。
ひと昔まえであればCRMに重点が置かれ、そのCRMを構成する要素であるリーダーシップやコミュニケーションといったNon Technical Skillが重要な資質とされていましたが、最近ではCRM能力は既に身につけているという前提で
「STARTLE EFFECT」
からの
「RESILIENCE」
という能力が重要だとされています。
いわゆる
「びっくりした状態から如何に早く立ち直るか」
という能力、、、一言で言えば「何事にも動じない能力」
じゃあ学生時代からこの能力を鍛えるにはどうすればいいのか?
う〜ん、、、、普通に勉強していてもこの能力は鍛えられないから、やっぱり運動系の部活かな?
副操縦士の給料
前回のブログのコメント欄で、りなさんから頂いた質問。
「副操縦士の方のお給料って、大体どのくらいなんでしょうか?」
私も興味があったので、オスロからの帰りの便で副操縦士に聞いてみました。
オランダ人の彼はオランダにあるフライトスクールに通い、エアラインパイロットになるために必要な事業用操縦士(多発)と計器飛行証明のライセンスを取得したのですが
訓練にかかった費用は総額で
120,000ユーロ(=約1600万円)
一部銀行で教育ローンを組んで、今でもその返済をしているそうです。
ちなみに金利は4%、、、
で、フライトスクールを卒業後、いま話題のライアンエアーにB737の副操縦士として就職
休暇等で飛ばない月の給料が4000ユーロ、忙しく飛んだ月の給料が7000ユーロ
平均すると6000ユーロくらい。
ライアンエアーの場合、勤務地がオランダ国内じゃなかったので
うまい具合に税金を払わないようにオランダでの滞在日数をコントロールしていたそうです。
で、いまの会社でB787の訓練を終えて飛び始めると平均月給が9000ユーロ、、、教育ローンの返済が楽になると言っていました。
ちなみに、彼のライアンエアーの同僚が会社の乗員に対する扱いに嫌気が差し
TUIというオランダの格安航空会社に転職してB737に副操縦士として乗務しているそうなのですが
月の平均給料が4000ユーロ、そこから税金を引かれて手取り2300ユーロ、、、、
教育ローンの返済が毎月1200ユーロなので、パイロットの仕事だけじゃ食っていけないと悩んでいて、既に再転職に向けて履歴書を書いているとのことでした。
世界的にパイロット不足が叫ばれていますが、まだまだ待遇の悪い航空会社も多いようです。
秋を通り過ぎて、、、
久々にやってきましたオスロ
9月下旬だというのに、気温7度。。。
ジョギングに行ったのですが、紅葉が綺麗でした
恐らくもう来月は冬季運航ですね、、、今のところ来る予定はありませんが。
もちろん夕食はノルウェジアン・グリルドサーモン
さっぱりとしたソースが食欲をそそりました。
ということで適度な疲労を感じつつ、、、お休みなさい。
ステレオタイプ(続き)
偶然にも本日の教官会議で人材開発部の部長さんが来られて、「先入観」について45分程度お話をされました。
先入観は11種類に分類されて
そのうちの一つが「無意識の先入観」
生まれ育った国や人種、宗教によって潜在意識の奥深くに根付いているので、それを払拭するのは難しい、、、、そうです。
分類された先入観をひとつひとつ説明され、とても興味深いお話でした。
結局のところ「自分自身が先入観を持っているという意識を持つことが大切」なんだと思います。
いや〜、なんだか少し気が楽になりました。
ステレオタイプ
少し前にケニヤ人副操縦士とドイツ上空を飛んでいる時、、、、
ケニヤ人「僕、高校生の時に短期の交換留学でドイツに来たんだけど、ホームステイでドイツ人の高校生の家に1週間泊まったんだ〜、もう10年くらい前の話だけどね」
私「へ〜、若い頃にいい経験したね〜」
ケ「初日にホストファミリーが僕を驚かそうと、リモコンでテレビの電源を入れたり切ったり、エアコンの電源を入れたり切ったりして見せてくれたんだよ、、、魔法みたいでしょ?って」
私「へ〜、その時に初めてリモコン見たの?」
ケ「いや、、、、僕は幸運にも裕福な家庭に育ったから、子供の頃から家庭には最新の電化製品がたくさんあって、全然驚かなかったんだけど、なんだかホストファミリーに申し訳なくて驚いたフリをしたんだよ。」
私 「・・・」(´・ω・`)
ケ「あ、、、あと自家用車のメルセデスで迎えに来てくれたんだけど、それもすごい自慢されたな〜」
なんだか切ないお話、、、、
ケ「で、数ヶ月後そのドイツ人学生が逆にケニヤに交換留学に来て、うちにホームステイしたんだけど、自家用のジェットヘリで迎えに行ったらビックリしてたよ。」
私「え!?自家用ジェットヘリ?」(゚Д゚)
ケ「うん、うちの庭にヘリポートがあるから」
私「・・・」(´・ω・`)
そりゃあ自家用車メルセデスとかリモコン程度じゃビックリしないよね、、、、
多種多様な国籍、人種の中で働いていると、ステレオタイプな人間にならないよう日々心がけているのですが、やっぱり先入観や思い込みで人を見てしまうことってあるんですよね、、、、特に訓練便や審査便の場合、先入観や思い込みで人を判断すると公平に評価できなかったり、的確に指導をできなかったりするので気をつけるようにしているのですが。
あらためて先入観を捨てようと思ったフライトになりました。。。
異常姿勢の防止及び回復訓練
会社では先月くらいからヨーロッパ当局(EASA)の指導で
「Upset Recovery and Prevention Training」
を開始しました。
日本語だと「異常姿勢の防止及びそこからの回復訓練」ってところでしょうか。
まずは教官からということで
座学が1日
ワークショップが1日
シミュレーター訓練が1日
の3日構成で教官訓練が行われ、それに参加したのですが
内容が航空力学から最近の事故調査報告まで広範囲に及ぶ内容で
充実した3日間
久々に
↓ 航空工学の本
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を引っ張り出して本気で復習、、、、良いブラッシュアップになりました。
異常姿勢の防止及び回復訓練に興味のある方は
ICAOの資料「Airplane Upset Prevention and Recovery Training Aid」
をご覧ください。